名古屋高等裁判所金沢支部 昭和24年(控)929号 判決 1950年3月02日
被告人
安田義雄
主文
原判決中被告人に対する有罪部分を破棄する。
被告人を懲役拾月及び罰金壱万円に処する。
但し四年間右懲役刑の執行を猶予する。
右罰金を完納できないときは金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
弁護人奈賀隆雄の控訴趣意第一点について。
刑事訴訟法第三一九条第二項は被告人は公判廷に於ける自白であると否とを問わずその自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされないと定めている。此の被告人中には共犯者である共同被告人をも含むものであつて、共犯者の自白を唯一の証拠として他の共犯者の犯罪事実を認定することを許さないことは学説の一致するところである。今本件を見る贓物に関する罪は刑事訴訟法上は共犯として取扱われているのである。従つて原判決の掲げる証拠は何れも共犯として取扱われている共同被告人として起訴せられた者の供述調書であつて他に有罪と認め得る証拠を掲げないでこれのみを以て有罪の判決を為したのは虚無の証拠を以て有罪とした違法がある。(中略)というのであるが、
贓物故買罪の認定を為すに当り其の贓物を窃取して売却した窃盜犯人の供述調書を証拠に供することは毫も違法ではなく縦令其の窃盜犯人が贓物故買の被告人と共同被告人である場合に於ても何等異るところがない。
(註、本件は、法令違背により破棄自判)